- コラム・インタビュー
- 企業不正・不祥事対策
- 第三者(取引先)管理
企業のコンプライアンスチェックでは、反社会的勢力の排除や各国の規制・制裁対応を中心に、取引開始時の審査を行っているケースが多く見られます。一方で、循環取引をはじめとする不正リスクは、取引開始後に状況が変化し、気づいたときには対応が遅れてしまうことがあります。
たとえば、最初は問題が見えなかった取引先でも、後からネガティブ情報が追加されたり、商流や契約内容が変わったり、担当者ごとの判断のばらつきによってリスクの見落としが起きたりします。その結果、いざ監査や有事対応の局面で、「なぜその頻度で確認したのか」「なぜその深度で調査したのか」「誰が、何を根拠に判断したのか」を説明しにくくなるのです。
本ページでは、循環取引リスクの基本から、初回チェックだけでは不十分な理由、そして継続的な取引先管理を仕組み化する方法まで、実務目線でわかりやすく解説します。
なぜ今、循環取引リスクを「取引開始後」まで見なければならないのか
循環取引は、複数の企業が関与し、通常の取引を装って売上や利益を水増しする不正の一類型です。日本公認会計士協会などの共同研究報告でも、循環取引は実在する取引先、実際の資金決済、整合した証憑を伴うことが多く、通常の監査の中でも発見が難しいケースが少なくないとされています。
さらに同報告では、循環取引は当初は少額で始まり、徐々に高額化し、発覚時には巨額化していることがあるため、未然防止と早期発見の両方が重要だと整理されています。
つまり、重要なのは「取引開始時に1回チェックしたから終わり」ではなく、取引開始後の変化を捉え続けることです。
循環取引とは何か
循環取引とは、複数企業が共謀して商品の転売や役務提供を繰り返し、取引が存在するように見せかけて、売上や利益を仮装する行為の総称です。
循環取引の代表的なパターン
共同研究報告では、循環取引の例として以下のようなパターンが示されています。
パターン 内容 スルー取引 自社が受けた注文を、実質的な付加価値を加えず他社へ回し、帳簿上だけ取引を通過させるケース。 Uターン取引(回し取引) 商品や製品が複数社を経由したあと、最終的に起点企業へ戻ってくるケース。 クロス取引(バーター取引) 複数企業が互いに商品を売買し合い、実需を伴わないまま売上をよく見せるケース。 (出典)循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告(公益社団法人日本監査役協会、一般社団法人日本内部監査協会、日本公認会計士協会)
なぜ発見が難しいのか
循環取引が厄介なのは、一見すると正常な取引に見える点です。取引先が実在し、資金決済も実際に行われ、注文書や受領書などの証憑も整っている場合があるため、形式面だけを見ても不正を見抜きにくいことがあります。
そのため、単なる反社チェックや初回の与信確認だけでなく、以下のような、取引開始後を含めた継続的な観察が重要になります。
- 商流の合理性
- 取引条件の変化
- エンドユーザーの不明確さ
- 特定担当者に依存したリスクの判断基準
- 取引量や取引頻度の不自然な増加
こんな運用になっていませんか?見落としやすい4つの兆候
次のような状態に心当たりがある場合、初回チェックだけでは拾いきれないリスクが残っている可能性があります。
- 既存取引先のネガティブ情報を最後に確認した時期がバラバラ
- 上場企業・大手企業だから安心として、調査の深度や頻度を変えていない
- 取引先の評価基準がルール化されておらず、担当者判断に依存している
- 監査や稟議で、いつ・誰が・何を根拠にどう判断したかを後から追うのが大変
共同研究報告でも、循環取引の兆候として、事業上の合理性が不透明な取引、通常想定しにくい商流、特定担当者への権限集中、特定取引先への急な取引増加、売掛金や在庫の滞留などが挙げられています。
つまり、問題は「悪い取引先を最初に見抜けるか」だけではありません。取引の途中で変化するリスクを、誰でも同じレベルで把握できる状態にしているかが問われます。
初回チェックだけでは足りない理由
1. ネガティブ情報は後から出てくる
取引開始時には問題が見えなくても、その後に報道、訴訟、行政処分、経営不安、重大インシデントなどが表面化することがあります。取引先管理を初回審査だけで終えてしまうと、こうした変化を見逃しやすくなります。
2. 契約内容や商流は変わる
最初は妥当だった取引でも、後から商流が複雑化したり、エンドユーザーが見えにくくなったり、契約条件が変化したりすることで、リスクの性質が変わることがあります。共同研究報告でも、商流の全体像や事業上の合理性の把握、高リスク取引への個別統制が重要とされています。
3. 判断基準が属人化しやすい
「この会社は有名だから大丈夫」「前から取引しているから問題ない」という経験則だけでは、リスクベースの運用になりません。共同研究報告でも、循環取引事例では特定担当者への権限集中、長期固定担当、情報共有不足が問題になりやすいと整理されています。
4. 証跡が残らないと説明責任を果たしにくい
近年、内部統制や不正予防においては、ルールがあるだけでなく、実際にどう運用したかを説明できることが重要になっています。財務報告に係る内部統制の評価・監査基準も改訂され、内部統制の実効性がより重視されています。
監査・稟議・有事対応で問われるのは、「実施したか」だけでなく「どう判断し、証跡を残したか」です。
取引先管理・コンプライアンスチェックの体制づくりは、お気軽にご相談ください
循環取引を含む不正リスクに有効な管理の考え方
1. リスクベースで調査の頻度・深度を決める
すべての取引先を同じ深さ・同じ頻度で見るのではなく、以下の内容などに応じて、確認頻度や追加調査の要否を変えることが重要です。
- 取引金額
- 商流の複雑さ
- 業種や地域
- 契約内容
- 過去のネガティブ情報
金融庁のAML/CFT関連資料でも、顧客管理、取引フィルタリング、取引モニタリングを組み合わせ、リスクベースで実効性を高めることが重要と整理されています。
2. 取引開始後も継続的にモニタリングする
金融庁は、取引フィルタリングを取引前やリスト更新時等に制裁対象者との照合を行い、未然防止につなげる手法、取引モニタリングを異常取引の検知・調査・判断を通じてリスク評価に反映する手法と定義しています。
この考え方は、一般事業会社の取引先管理でも参考になります。つまり、取引前のチェックに加えて、既存取引先の変化を継続的に把握する仕組みが必要です。
3. 申請・審査・承認・記録を一気通貫にする
循環取引を防ぐうえでは、事前審査も、継続モニタリングも、承認も、証跡保存も、別々の台帳やメールで分散管理しないことが重要です。バーゼル銀行監督委員会のサードパーティリスク管理原則でも、リスク評価、デューデリジェンス、契約、オンボーディング、継続的モニタリング、契約終了までを一連で管理する考え方が示されています。
日経リスク&コンプライアンスTPRMでできること
日経リスク&コンプライアンスTPRMは、明文化された社内規程に沿って、取引先審査の申請から、ネガティブニュースのスクリーニング、リスク評価、承認、モニタリングまでを一貫して管理できるシステムです。
循環取引をはじめとする不正リスクでは、「取引開始時に確認したか」だけではなく、取引開始後にどう変化を捉え、どう判断し、どう記録したかが重要になります。日経リスク&コンプライアンスTPRMは、こうした運用を担当者任せではなく、仕組みとして回せる状態を目指します。
日経リスク&コンプライアンスTPRMの強み
1. 契約申請からモニタリング・監査対応まで一元管理
取引先との契約申請、審査、追加調査、承認、モニタリング、監査対応までを分断せずに管理できます。部門横断で動く業務でも、状況を追いやすくなります。
2. ルールに基づく客観的なリスク評価で脱・属人化
法規制やガイドライン、規制当局の執行事例を踏まえて設計したスコアリングにより、「担当者によって判断が変わる」状態を減らし、客観性を高めます。
3. ネガティブ情報や変化を見逃しにくい継続運用
初回審査だけではなく、既存取引先についても継続的に見直しやモニタリングを行えるため、後から変わるリスクへの対応力を高められます。
4. 証跡が残り、監査・稟議・有事対応で説明しやすい
誰が、いつ、何を見て、どう判断したかを記録として残せるため、社内監査や稟議だけでなく、外部説明が必要な場面にも備えやすくなります。
5. アドバイザリーサービスで態勢整備まで支援
ツール導入だけでなく、取引先のリスク評価基準やリスク管理規程の見直し、リスク管理態勢の整備まで支援可能です。運用の効率化と態勢の整備をセットで進めたい企業に適しています。
このような企業におすすめです
以下のような課題を感じている企業に向いています。
- 取引先チェックが取引開始時の1回で終わりがち
- 既存取引先のネガティブ情報確認が担当者ごとにバラバラ
- 上場企業・大手企業を一律に低リスクとみなし、調査頻度や深度を見直していない
- 営業、調達、法務、コンプライアンスで情報が分断している
- 監査や有事対応で、判断根拠や証跡の確認に時間がかかる
- 取引スピードは落とさず、リスク管理を強化したい
よくある質問
Q1. コンプライアンスチェックをしていれば、循環取引リスクにも十分対応できますか?
いいえ。コンプライアンスチェックも重要ですが、循環取引は商流の不自然さ、取引条件の変化、担当者の属人化、証跡の不十分さなど、別の観点でも見る必要があります。循環取引は通常の取引を装うことが多く、形式的な確認だけでは発見が難しい場合があります。
Q2. なぜ「取引開始後」の管理が重要なのですか?
取引開始時点では問題が見えなくても、その後にネガティブ情報の追加、契約内容や商流の変化、異常取引の発生など、リスクが変化するためです。金融庁も、継続的な顧客管理や取引モニタリングの重要性を示しています。
Q3. どの取引先をどれくらいの頻度で見ればよいですか?
一律ではなく、リスクに応じて決めるのが基本です。取引金額、商流の複雑さ、地域、業種、契約類型、過去のネガティブ情報などを踏まえ、頻度や深度を変える必要があります。
Q4. システム化すると、現場のスピードが落ちませんか?
むしろ、判断基準や申請フロー、証跡管理を標準化することで、確認漏れや手戻りを減らし、営業・契約・調達・物流のスピードを落としにくくなります。
Q5. まず何から始めるべきですか?
現状把握から始めるのが近道です。
- 既存取引先の最終確認時期
- リスク評価基準の有無
- 承認フローの明文化状況
- 証跡の保存状況
などを棚卸しし、属人化している箇所を洗い出すことをおすすめします。
まずは運用イメージをご確認ください
循環取引をはじめとする不正リスクは、「起きてから対応する」より、「変化を早く捉えられる運用にしておく」ことが重要です。
日経リスク&コンプライアンスTPRMなら、取引先審査の申請から、ネガティブニュースのスクリーニング、リスク評価、承認、モニタリング、証跡管理まで、属人化を抑えた取引先リスク管理の仕組み化を支援できます。
まずは、詳細説明やトライアルで運用イメージをご確認ください。
- 日経リスク&コンプライアンスTPRMの詳細を聞きたい
- 資料請求
- デモを申し込む
- 自社の運用課題を相談する

