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2024年に成立したEUの企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)は、企業活動およびバリューチェーン全体における人権・環境リスクの特定、防止、軽減、是正を求めるEU指令です。
2026年現在、EU加盟国で国内法化が進んでおり、EU域内で事業を行う日本企業にとっても対応の重要性が高まっています。
本記事では、CSDDDの概要や施行スケジュール、日本企業に求められる対応と実務上のポイントについて解説します。
CSDDDが企業に課す義務の本質
CSDDDは、努力目標ではなく、法的義務を伴う指令です。
企業のバリューチェーン全体において、児童労働や環境破壊などのリスクを特定し、適切に対応することが求められます。
本章では、概要と最新の動向について解説します。
人権・環境リスクの特定と防止
企業は、自社の事業活動に加え、子会社や取引先が引き起こす可能性のある人権侵害や環境負荷などの負の影響を特定し、適切に防止・是正する責任を負います。
人権リスクの具体例としては、児童労働や強制労働の防止、適正な賃金の確保、長時間労働の是正など、労働環境の改善が挙げられます。
また環境面では、温室効果ガスの排出管理、水質・大気汚染の防止、生物多様性の保全、森林破壊の抑制など、国際的な枠組みの中で重視される項目が対象となります。
これらのリスクを包括的に評価し、懸念がある場合には、未然防止のための具体的な対応策をあらかじめ社内プロセスに組み込んで運用することが求められるでしょう。
サプライチェーン全体への適用
CSDDDがカバーする範囲は自社内にとどまらず、原材料調達から部品の製造、組み立てを担う原材料供給者や上流サプライヤー、さらには製品の流通や廃棄に至るまでのバリューチェーン全体におよびます。
これまで日本企業で広く行われてきた直接取引先へのアンケート調査だけでは、サプライチェーン全体のリスクを十分に把握することは難しい状況です。
そのため、2次・3次取引先に加え、鉱山や農場といった上流の調達現場まで視野に入れたリスク把握の重要性が高まっています。
取引関係が直接的か間接的かを問わず、製品やサービスが作られる全工程において、追跡可能性を確保し、構造的にリスクをマッピングしていく体制の構築が必要となります。
実行義務
CSDDDは情報開示にとどまらず、実際にリスクを是正・防止する「実行行為」そのものを企業に求める点が特徴です。
サステナビリティ報告書にリスクを記載するだけでは義務を果たしたとはみなされず、問題が発見された場合には実効性のあるアクションを起こさなければなりません。
具体的には、取引先に対して行動規範の遵守を契約書で確約させるなど、契約面での担保を確保することが求められます。また、中小規模のサプライヤーに対しては、規制対応を支援するための技術面・資金面でのサポートを行うことも重要です。
さらに、深刻な人権侵害や環境破壊が継続し、改善が見込めない場合には、最終手段として取引の一時停止や解消を検討するなど、実効性のある対応が求められます。
CSRDとCSDDDの違い
混同されやすいCSRD(企業持続可能性報告指令)は、企業に対してサステナビリティ情報の開示を求める制度であるのに対し、CSDDDはサプライチェーン全体における人権・環境デューデリジェンスの実施と是正対応そのものを求める枠組みです。
CSRDが「情報の報告」に重点を置くのに対し、CSDDDは「リスクの特定から防止・是正までの実行」を求める点に違いがあります。
2026年時点でのEU各国の国内法化状況
指令の発効後、EU加盟国は国内法を整備してきました。
ドイツのサプライチェーン法など、既存の国内法がCSDDDに合わせて強化されており、EU内で事業を展開する日本企業は、所在国ごとの細かな要件の違いにも注視する必要があります。
CSDDDの対象企業と施行スケジュール

CSDDDは企業の規模(従業員数・売上高)に応じて段階的に適用されます。
日本企業であっても、EU域内での売上規模によっては直接の対象となるほか、対象企業のサプライチェーンに含まれる場合には、直接・間接を問わず影響を受ける可能性があります。
本章では、対象企業と施行スケジュールについて解説します。
対象となる企業の定義
EU域内で一定以上の売上を上げる日本企業は、直接の適用対象です。
また、これに満たない場合でも、取引先であるEU企業からCSDDD準拠の調査を求められるため、実質的にほぼすべてのグローバルサプライヤーが対象に含まれます。
2027年から始まる段階的な施行スケジュール
施行は2027年から段階的に開始されます。
まず2027年に超大規模企業(従業員5,000人超かつ売上高15億ユーロ超の基準等)から適用され、その後3年〜5年をかけて段階的に対象が拡大します。
企業規模に応じて段階的に適用が開始されるため、対象となる可能性がある企業は早期の準備が重要です。
日本企業における具体的リスク
EU規制の直接対象外であっても、EU企業との取引において、人権・環境リスクに関する対応状況の提示を契約条件として求められるケースが増えています。
こうした要求に対応できない場合、取引機会の減少やサプライチェーンからの除外や取引停止につながる可能性があります。
CSDDD対応の鍵を握るサプライチェーン調査の効率化

CSDDD対応で困難なのは、下請けだけでなく、その先のサプライヤーまで遡ったリスクの特定です。
アナログなアンケート調査では限界があり、データの網羅性と信頼性を担保できるデジタルプラットフォームの活用が不可欠な理由について解説します。
人権・環境リスク情報の網羅的な収集方法
CSDDDでは、強制労働、児童労働、汚染、生物多様性の損失など多岐にわたる項目が調査対象となります。
目視では困難な隠れたリスクを可視化していくことが重要です。
取引先とのエンゲージメントと継続的なモニタリング
CSDDD対応は、年1回の調査など単発の確認だけで完結するものではありません。
人権や環境に関するリスクは変化し得るものであり、継続的な状況把握と、必要に応じた是正対応が求められます。
まとめ
CSDDDは、EUでビジネスを行う日本企業にとって避けて通れない高い壁ですが、同時にサプライチェーンをクリーンにし、企業価値を高める好機でもあります。
2026年という今、準備を加速させることが、2027年以降の持続可能な成長の基盤となります。
併せて、早期に体制整備を進めることが、将来的な規制対応だけでなく、企業価値向上や取引機会の維持にも直結するでしょう。
CSDDDに関するよくある質問(FAQ)
本章では、CSDDDに関する質問を紹介し、解説します。
企業のサステナビリティ対応やサプライチェーン管理に直結する重要な制度であり、実務上の理解が不可欠なポイントを整理しています。
Q1:CSDDDは日本国内の事業のみの企業にも関係ありますか?
直接の適用対象にはなりませんが、取引先がEUの大手企業である場合、サプライヤーとしての情報開示やデューデリジェンスの実施を契約条件として求められる可能性が非常に高いです。
実質的に、EU企業のサプライチェーンに関わる企業であれば、対応を求められる可能性が高いと考えられます。
Q2:違反した場合の具体的な罰則は何ですか?
加盟国によって異なりますが、指令では全世界売上高の少なくとも5%を上限とする制裁金を科すことができる仕組みが盛り込まれています。
また、不適切な管理によって被害が生じた場合、被害者からの損害賠償請求を受けるリスクも明記されています。
Q3:CSDDD対応のために、まず何から手をつけるべきですか?
まずは自社のサプライチェーンを可視化し、主要な取引先や調達先を把握することから始めましょう。
どの地域のどのサプライヤーが、どのような人権・環境リスクを抱えている可能性があるかを把握する初期スクリーニングを実施し、リスクが高い地域や取引先から優先的に評価することが重要です。

