生成AIと著作権の最前線|企業が安心してAIを活用するために知っておくべきこと

2025年8月、日本経済新聞と朝日新聞が米AI検索企業Perplexity(パープレキシティ)を著作権侵害で提訴したという報道は、ビジネス界に大きな波紋を広げました。
出典:「日経・朝日、米AI検索パープレキシティを提訴 著作権侵害で」日本経済新聞
生成AIを活用し、市場調査レポートやプレゼン資料を効率的に作成する企業が増加する一方で、「この生成物は社外で使って大丈夫なのか?」「著作権侵害で訴えられるリスクはないのか?」といった懸念の声も高まっています。安全に生成AIを活用するためには、何に注意すべきなのでしょうか?
本記事では、著作権侵害となる要件や、企業が実務で直面する著作権リスクと、その具体的な対策について詳しく解説します。
著作権侵害となる2つの要件
生成AIを利用する前に、まず著作権侵害がどのような条件で成立するのかを理解しておく必要があります。 著作権侵害が認められるには、次の2つの要件が必要とされています。
後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること(類似性)
既存の著作物に依拠して複製等がされたこと(依拠性)
出典:「AIと著作権」文化庁
単に似ているだけでは著作権侵害にはあたらない!
重要なポイントは、「単に似ている」だけでは著作権侵害にならないという点です。
たとえ既存の作品と酷似したコンテンツが生成されたとしても、それを「参考にした(依拠性)」という事実が証明されなければ、偶然の一致として扱われ、著作権侵害は成立しません。
つまり、「類似性」と「依拠性」の両方が立証されてはじめて法的な問題となるといえるでしょう。この基本原則は、人間が作成したコンテンツでも、AIが生成したコンテンツでも変わりません。
生成AIでの著作物は「誰の権利」になるのか?
著作権侵害の基本要件を理解したところで、次に考えるべきは「AIが生成したコンテンツは、そもそも著作物として認められるのか?」という問題です。テンツは、そもそも著作物として認められるのか?」という問題です。
AI単独での生成物は原則、著作物に該当しない
著作権法第2条第1項第1号において、著作物は以下のように定義されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
出典:「AIと著作権」文化庁
AI自体は法的な人格を持たないため、AIが単独で生成したコンテンツには、原則として著作権が発生しないというのが現在の法的解釈であり、この点は明確に示されています。
AI単独で生成されたコンテンツに著作権が発生しないことは、実務上いくつかの重要な影響をもたらします。
まず、著作権による法的保護が受けられないため、他社が同じプロンプトを使って同様の生成物を作成し、それを自由に利用することが可能となります。つまり、自社が時間をかけて生成したコンテンツであっても、独占的に使用する権利を主張できないということです。
逆にいえば、他社がAIで生成したコンテンツを自社で利用する場合でも、類似性と依拠性が認められない限り、著作権侵害を問われるリスクは低いと考えられます。ただし、これはあくまでAI単独で生成された場合に限られ、人間の創作的寄与が加わっている場合は別の判断となる点に注意が必要です。
人間の創作的寄与があれば「著作物」になる
一方で、人間が一定の関与をした場合には状況が変わってきます。
人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作 意図」があるか、及び、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったか、によって判断されます。(出典:「AIと著作権」文化庁)
つまり、次のような要素がある場合、人間が著作者として認められる可能性があるとされています。
- 創作意図:自分の思想や感情を表現しようとする明確な意図
- 創作的寄与:具体的で詳細なプロンプト設計、繰り返しの試行錯誤、AI出力後の加筆・修正
どのような行為が創作的寄与に該当するかは、個々の事例ごとに判断が必要とされていますが、実務的な目安としては、次のように考えることができるでしょう。
創作的寄与が認められにくいケース
- 簡単な指示のみで生成ボタンを押すだけでAIが成果物を生成した場合
- 単なるキーワードの羅列のみのプロンプトや、単純なパラメータ設定のみで生成した場合
創作的寄与が認められる可能性があるケース
- 詳細なストーリー展開や構図を具体的なデータ入力や対話を通じ、何度も試行錯誤を重ねた場合
- AI生成後に結果の吟味と大幅な修正や加工を通じ、自らの意思に沿った作品を完成させた場合
ただし、AIの技術の変化が非常に激しいこと、また具体的な事例が多くない現状から、創作的寄与の判断基準を明確にすることは難しいという見解が示されています。 この点について、文化庁の資料では次のように述べられています。
AIの技術の変化は非常に激しく、具体的な事例が多くない状況で、どこまでの関与が創作的寄与として認められるかという点について、現時点で、具体的な方向性を決めることは難しい
出典:「AIと著作権」文化庁
つまり、現段階では明確な線引きは存在せず、個別の事案ごとに総合的な判断が求められるという、やや不確実な状況にあるといえるでしょう。
生成AIの著作権リスクは「利用段階」が最大の確認ポイント
生成AIに関する著作権リスクを考える際、最も重要なのは「どの段階でリスクが発生するか」を理解することです。 結論からいえば、AIの学習段階では原則的に問題は生じませんが、次の利用段階において著作権侵害のリスクが高まります。
学習段階
著作権法第30条の4により、情報解析を目的とする場合は原則として著作物の利用が認められています。そのため、AIが学習データとして著作物を使用すること自体は、基本的に問題ありません。
利用段階
生成されたコンテンツを実際に使用する段階では、通常の著作権侵害と同じ判断基準が適用されます。従って、前述の「類似性」と「依拠性」の著作権要件により、侵害の有無が判断されることになります。
つまり、「どのAIツールを選ぶか」よりも、「その生成物をどう使うか」こそが、重要な確認ポイントになると考えられます。
AI生成・利用段階で想定される3つのリスクケース
ここからは、実務においてどのような場面で著作権リスクが発生するのか、具体的なケースを見ていきましょう。
ケース1:生成AIで資料作成
生成AIに関する著作権リスクを考える際、最も重要なのは「どの段階でリスクが発生するか」を理解することです。
結論からいえば、AIの学習段階では原則的に問題は生じませんが、次の利用段階において著作権侵害のリスクが高まります。
想定される利用シーン
- 競合分析レポートを作成する際に、複数のニュース記事をAIに要約させる
- プレゼン資料の説明文章を生成AIで作成する
潜むリスク
AIの出力した文章が特定の記事と表現上酷似している場合、複製権侵害の可能性が生じます。複数の記事をつなぎ合わせて要約した結果、元記事の創作的な表現がそのまま残ってしまうケースも要注意です。
また、次のような場合に依拠性が推認される可能性があるとされています。
実務上の対応策としては、AI生成文をそのまま使用せず、入念に自社の視点や分析を加えて再構成・言い換えることが重要です。また、引用する場合は出典を明示し、引用のルールを遵守する必要があります。
ケース2:画像生成AIの利用
想定される利用シーンとしては、次のケースが考えられます。
- プレゼン資料用のイメージ画像を生成する
- SNS投稿用のアイキャッチ画像を作成する
潜むリスク
「○○風のイラスト」「△△キャラクター風のデザイン」など、特定の作品や作家を想起させる指示を出した場合、著作権侵害のリスクが高まります。また、意図せず既存のイラストレーターの作風を模倣してしまうケースも考えられるでしょう。
実務上の対応策としては、固有名詞や具体的な作品名・キャラクター名を直接入力しないことが基本です。公開前には、逆画像検索ツールを使って類似画像がないか確認しましょう。特に商用利用の場合は、慎重なチェックが求められます。
ケース3:AI検索サービスの要約を資料・コンテンツに転載
想定される利用シーンとしては、AI検索(要約機能付き検索サービス)で得られた要約文を、社内資料・Webコンテンツ・提案書・SNS投稿などに、そのまま転載するといったことが考えられます。
潜むリスク
AI検索の要約であっても、元の著作物の創作的表現が残っている場合があり、無断転載は著作権侵害に該当する恐れがあります。また、要約内容の誤りがそのまま掲載されることで、企業の信用低下を招くリスクも存在します。
実務上の対応策としては、入念に原典となる本文を確認し、自社の言葉で再記述することが必須です。出典を明示することはもちろん、必要に応じて適切な引用要件(主従関係の明確化、出所の明示など)を満たすようにしましょう。特に社外向けの公開物については、厳格なチェック体制が求められます。
AI生成物による著作権トラブル回避の3つの対策
これまで見てきたリスクを踏まえ、著作権トラブルを回避するための具体的な対策を3つ解説します。
「AIが作ったから問題ない」と思い込まない
「AIが生成したコンテンツだから著作権の問題はない」と安易に考えることは避けましょうAIによる生成は免責理由にならないからです。
生成されたコンテンツが、人間によって作成されたものか、AIによって生成されたものかは関係ありません。既存の著作物との「類似性」と「依拠性」があるかどうかによって、著作権侵害の成否が判断され、最終的な責任は、そのコンテンツを利用・公開した者が負うことになります。
生成物の類似性チェックをせずに公開しない
AI生成物は、学習に用いられたデータの影響を受ける可能性があります。そのため、公開前の類似性チェックは必須のプロセスです。
チェック方法例
- テキストの場合:Google検索などで特徴的なフレーズを検索
- 画像の場合:Google画像検索や逆画像検索ツールを活用
- 商用利用・社外公開前は特に入念にチェック
注意すべきプロンプト表現として、「○○風」や「特定キャラクター風」といった指示は、侵害リスクを高めます。できるだけ固有名詞や具体的な作品名を避け、「柔らかいタッチの手描き風」「モダンでシンプルなデザイン」といった抽象的・スタイル的な表現を用いるのが賢明です。
社内外での公開・利用前に責任者レビューを通す
AI生成物の利用可否やリスク判断は、個人の判断に委ねるべきではありません。必ず組織としての判断プロセスを経ることが重要です。
組織的な体制構築としては、次の内容が考えられます。
- 法務部門、広報部門、知財部門などによる確認プロセスの確立
- 承認フローの明確化
- 社内ルールとしての文書化
「ルール化」と「承認フロー化」を進めることで、担当者による属人的なリスクを防ぎ、企業全体としてのリスク管理レベルを向上させることができます。
生成AI活用で著作権侵害を防ぐ具体的な回避法
ここまで解説してきた内容を踏まえ、実務においてどのように著作権リスクを回避すればよいのか、具体的な実践方法を整理します。
具体的指示で依拠性を回避
まず、プロンプト設計の段階では、特定の作品名、キャラクター名、作家名といった固有名詞の入力を避けることが重要です。「○○風」という曖昧な指示ではなく、「柔らかいタッチで温かみのある色彩」といった具体的な視覚的特徴を記述することで、既存作品への依拠性を回避できます。
類似性チェックの徹底
次に、出力後の確認プロセスとして、Google検索や逆画像検索ツールを活用した類似性チェックを必ず実施しましょう。情報の正確性を検証するファクトチェックや、創作的表現の残存確認も欠かせません。
リスク管理体制の整備
さらに、組織全体での運用体制の構築が不可欠です。AI利用ガイドラインの策定や承認フローの文書化、定期的な社内研修の実施やインシデント発生時の対応手順の整備など、組織的なリスク管理体制を整えることで、著作権リスクを大幅に軽減できるでしょう。
著作権に配慮した生成AIサービスを利用する
著作権リスクを最小化するためには、信頼できる情報を活用しながら、著作権への配慮が明確に行き届いているサービスを選ぶことが、何よりも大切です。
当社が提供している「NIKKEI KAI」は、適切な権利処理が実施された情報基盤を持つサービスを利用することを推奨します。著作権リスクへの不安を抱えることなくAIを業務に活用できます。(関連記事「著作権リスクを回避する生成AI「NIKKEI KAI」」)
【段階別】生成AI利用時におけるチェックポイント
企業の実務で生成AIを安全に活用し、著作権リスクを管理するためには、利用の各段階でそれぞれ異なるチェックポイントを押さえる必要があります。
ここでは、「利用前」「利用時」「公開・利用前」の3つの段階に分けて、具体的な確認事項を見ていきましょう。
利用前
生成AIを導入する前の段階では、ツール選定と社内体制の整備が重要です。特に、利用規約による法的リスクの確認と、入力情報の制限を明確にする社内ルールの策定が欠かせません。具体的に、この段階で組織が確認すべき項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 利用規約の確認 | 著作権リスクの把握 |
|
| 社内ルールの整備 | 組織的リスク管理 |
|
利用時
実際にAIを利用する段階では、入力内容と生成過程の管理に注意を払う必要があります。このフェーズでは、機密情報や個人情報の漏洩を防ぐ「入力管理」と、生成過程を記録し、人間の創作的寄与を証明するための「プロセス管理」の二点が鍵となります。具体的に確認すべきチェック項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 入力内容の確認 | 情報漏えい・著作権侵害の防止 |
|
| 生成過程の記録 | 人間の関与度の証明 |
|
公開・利用前
コンテンツを公開・利用する前には、多角的な確認とレビュープロセスが必須となります。この最終段階では、生成物の著作権侵害リスクを排除するための「コンテンツの最終確認」と、社内の複数部門による「組織的なレビュー」が欠かせません。具体的に、このフェーズで必要となるチェック項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| コンテンツの最終確認 | 著作権侵害リスクの排除 |
|
| 社内レビュー | 多面的なリスク評価 |
|
| 使途別の対応 | 適切なリスクレベルの設定 |
|
安全な生成AIの選び方
著作権リスクを最小化するためには、信頼できるAIサービスを選定することも重要な要素となります。
選定にあたっては次のポイントを基準とすることが重要です。
提供企業の信頼性
経済産業省の「AI事業者ガイドライン」では、AI提供事業者に組織的なガバナンス体制やコンプライアンス対応が求められており、実績のある企業ほど、政府のガイドラインに沿った体制を整備している傾向があると考えられます。
著作権への配慮
学習データの出典が明確であること、著作権者との適切な契約が結ばれていることなど、著作権への配慮が明示されているサービスを選びましょう。
利用規約の明確性
生成物の権利帰属、商用利用の可否、免責事項などが明確に記載されているかを確認する必要があります。
補償制度の有無
万が一著作権侵害が発生した場合の補償制度があるかどうかも、重要な判断材料となります。
サポート体制
問い合わせ窓口やトラブル時のサポート体制が整っているかも確認の必要があります。
ただし、学習データの出典や著作権処理の詳細を公開しているAIサービスは、実際のところまだ多くありません。そのため、信頼できるサービスを見極める目が必要です。
「NIKKEI KAI」は、日本経済新聞社のコンテンツをはじめ業界専門紙、企業発表情報などの信頼性の高いメディアコンテンツを学習データとして活用し、著作権への配慮を明確にした生成AIサービスです。(関連記事「著作権リスクを回避する生成AI「NIKKEI KAI」」)
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ビジネス情報に特化しているため、市場調査や競合分析といった実務での活用において、著作権リスクを抑えながら、質の高い情報収集が可能です。
著作権リスクに備えた生成AIの活用が自社の競争力を高める第一歩
生成AIは業務効率化や創造性向上において大きな可能性を秘めていますが、著作権リスクへの適切な対応が不可欠です。
本記事では、AI単独の生成物には原則著作権が発生しないこと、人間の創作的寄与があれば著作物性が認められる可能性があること、そして「利用段階」が最大のリスクポイントであることを解説しました。
重要なのは「AIが作ったから問題ない」という思い込みを排除し、類似性チェックの徹底と組織的なレビュー体制を構築することです。
生成AIと著作権の関係は、法整備や判例の蓄積とともに今後も明確化が進むでしょう。企業には最新情報のキャッチアップと、自社ガイドラインの継続的な整備が求められます。
NIKKEI KAIの詳細は、以下のリンク、フォームなどからご確認ください。






