FXの黎明期といえる2002年に設立された株式会社外為どっとコムは、口座数約58万件、預り資産は約1,200億円(2023年2月末現在)とFX業界のリーディングカンパニーといえる存在だ。2022年9月より伊藤忠商事株式会社が大株主となり、今後のサービス拡大および企業の成長が期待されている。AML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)を含む法令遵守への取り組み強化として、2022年に「日経リスク&コンプライアンス」を導入した。
活用状況
顧客管理におけるリスク評価に
ネガティブニュースとウォッチリストを活用
株式会社外為どっとコムは、FX取引ツールを介して個人向けFX取引サービスやバイナリーオプションサービスを提供している。1通貨単位の取引が可能(FX積立サービスのみ。FX取引サービスについては1,000通貨単位から)で、口座開設手数料や口座維持手数料、取引手数料などが無料で使いやすく、FX取引初心者から経験者まで幅広い層に支持されている。「お客様第一主義」を理念に掲げ、常に商品やサービスの改善に努める株式会社外為どっとコムの口座開設数は約58万件で、その数からも高い信頼を得ていることがうかがえる。
信頼を担保するものとしてコンプライアンスは欠かせない。FXも含め金融商品を扱う業者に対しては、金融庁からのガイドライン策定が明示されたこともあり、コンプライアンス対策強化は喫緊の課題だ。そこで株式会社外為どっとコムではコンプライアンス部が主導し、対策強化の要となるスクリーニングの精度向上を目的に「日経リスク&コンプライアンス」を2022年に導入した。
コンプライアンスに係る方針策定や、社内でコンプライアンス違反が発生しないための組織づくり、契約・広告などに関する合法性チェック、クレーム・苦情・紛争などの対応、関係官公庁や団体に関する折衝・報告など実に幅広い業務を担うコンプライアンス部の高橋浩氏は、「日経リスク&コンプライアンス」を「操作も分かりやすく、とにかく使いやすい」と評する。
コンプライアンス部 高橋浩氏: 弊社では「日経リスク&コンプライアンス」を、主に顧客管理部門でのリスク評価の実施に活用しています。スクリーニング結果を踏まえてリスク区分を判断し、必要な管理対応を実施しています。
制裁対象者リストや、不芳情報(ネガティブニュース)などの幅広い情報とのスクリーニングをまとめて対応できる仕組みの構築が課題でしたが、ネガティブニューススクリーニングとウォッチリストスクリーニングの両方の機能を持つ「日経リスク&コンプライアンス」を導入したことで、その課題をクリアすることができました。
導入の背景ときっかけ
外国PEPsや親族関係者の抽出で、
口座開設において欠かせない属性把握を徹底
「日経リスク&コンプライアンス」の導入を決めたのは、金融庁が公表した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に明示されている「信頼性の高いデータベースやシステムを導入するなど、金融機関等の規模や特性等に応じた合理的な方法により、リスクが高い顧客を的確に検知する枠組みを構築すること」に対応するためだ。株式会社外為どっとコムも金融庁からガイドラインが公表された2018年から、どのような枠組みを構築すべきなのか社内で検討を重ねてきた。
また株式会社外為どっとコムでは、これまでビジネスデータベースサービス「日経テレコン」による検索情報と金融庁などから提供される情報を社内のシステムツールで読み込み、スクリーニングを行っていた。しかし金融庁などから提供される情報は定期的に更新されるのでその都度社内のシステムツールも更新しなければならず、システムツールの動作不良により作業が中断されることもあり、スクリーニングに労力を割いていた。
高橋氏: 弊社では「日本国のみ」に居住していることが口座開設の条件であり、「外国PEPsに該当するか否か」という質問項目を設けてお客様に申告いただいています。しかしあくまでも自己申告です。日本に居住する日本人が外国PEPsに該当する可能性も考えられますし、お客様ご自身が外国PEPsに該当していることを認識されていない場合もあります。
属性把握の精度を上げるには、お客様の申告に一存するだけでなく弊社のチェック体制を強化する必要があります。お客様からの申告と弊社のチェック体制の両方が揃って初めて、精度の高い確認ができたと言えるのではないかと思いますし、虚偽申請の可能性がある申告をいち早く見つけ出し、事前に食い止めるリスクコントロールが、今後はさらに重要になってくるでしょう。
そうした観点から「日経リスク&コンプライアンス」のような情報ソリューションの導入は必須だと判断しました。
導入の効果
新規口座開設時以上に、
既存顧客への管理体制の強化にメリット
「日経リスク&コンプライアンス」を導入したことで得た一番のメリットは、口座をこれから開設するお客様に対してだけでなく、既存のお客様への管理体制が強化できたことだという。
高橋氏: 既存のお客様はすでに自己申告を終えている方々です。改めて申告し直していただいても、同じ内容が返ってくる可能性があります。また口座を開設いただいた後で、登録情報や属性情報も変わっていきます。それら全ての情報を漏れることなくお客様に申告いただいているのか、弊社側では把握しきれないところもあります。
ですからお客様の自己申告に依存するのではなく、既存のお客様への継続的なリスクコントロールが不可欠ですし、そのための体制づくりが「日経リスク&コンプライアンス」によって強化されたことは私たちにとって大きいと感じています。
高橋氏: また、「日経リスク&コンプライアンス」は、マネー・ローンダリングなど私たちが知りたい情報を収集することに特化したソリューションなのでチューニングすら必要ありません。ただ検索するだけでリアルタイムに情報を把握でき、情報量も多くて精度も高いので信頼できます。
今後の展望
既存口座の定期的なスクリーニングで
継続的なリスクコントロール
株式会社外為どっとコム コンプライアンス部では、日経リスク&コンプライアンス導入後に、独自のリスクスクリーニングを設定し、既存口座約58万件のうち約2万件分のスクリーニングを終えている。抽出した顧客データをCSVファイルで取り込み、自動的にスクリーニングを行う機能を活用したことで、以前と比べると最小限の工数で実施できたという。
高橋氏: 今回は約2万口座に絞って行いましたが、今後はどの程度の口座数に絞って対応するのが適切なのか、頻度も含め検討し、リスク度に応じたスクリーニングを定期的に実施する体制を整えることが当面の目標です。例えば最近の話として、ウクライナ侵攻に伴い多くのロシア関係者に対して資産凍結等措置が行われましたし、確認すべき情報は今後も増え続けるだろうと考えています。今後も「日経リスク&コンプライアンス」を活用しながら、より属性把握に努めていきたいと考えています。
改めてコンプライアンス遵守は、会社の存続にもかかわることです。この情報を調べていれば安全だという正解はないかもしれませんが、これからも最善を尽くしていきたいです。
マネー・ローンダリング規制や海外贈賄規制など、国内外問わず遵守すべき法規制は今後さらに広範囲になることが予測される。その範囲が広がれば広がるほど、法令遵守の判断基準の一つとなるスクリーニングの精度が重要になってくる。それは株式会社外為どっとコムだけでなく業界全体の課題といえ、「日経リスク&コンプライアンス」を活用・応用するシーンはさらに増えていくのではないだろうか。