マーケットシェアとは
まずは、マーケットシェアの概要やシェアアップとの違いについて解説します。
マーケットシェアは市場占有率と同義
マーケットシェアとは、対象となる市場において自社製品が占める割合を表す指標です。市場占有率とも呼ばれ、2種類に分けられます。マーケットシェアは、自社製品の売上や販売した数、販売量などをもとに算出されます。自社のマーケティング戦略に役立つほか、競合他社といかに差別化するかの参考にもなります。
シェアアップとの違い
マーケットシェアを知るうえで、シェアアップという単語についても把握しておきましょう。シェアアップとは、自社製品を売り込んでいくために、市場における占有率を向上させることを指しており、シェア拡大ともいわれています。シェアアップを実現するには、新規の顧客やリピーターを増やす以外に、客単価の向上が重要です。
マーケットシェアの種類
マーケットシェアは、絶対的市場シェア率と相対的市場シェア率に分類されます。それぞれの概要を解説します。
絶対的市場シェア率
絶対的市場シェア率(絶対的市場占有率)は、自社製品が属する市場において、どのくらい占有しているのかを表す割合です。市場のなかで、自社製品がどんな立ち位置にいるのか、競合製品とどんな関係性にあるのかを知ることができます。ただし、市場における割合を市場全体で見るのか、対象を絞り込んだ市場で見るのかでシェア率が異なる点に注意が必要です。
相対的市場シェア率
相対的市場シェア率(相対的市場占有率)は、他社の絶対的市場シェア率と比べ、自社製品はどれだけのシェアがあるのかを表す数値です。自社よりもシェア率が高い企業や、競合他社と比較するために活用されるケースが多くあります。競合企業との関係性や自社が影響を与える力を知るうえで欠かせない指標です。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらマーケットシェア把握の必要性
マーケットシェアの把握は、自社の課題発見や新事業の計画に欠かせません。具体的に解説します。
市場内での立ち位置が分かる
マーケットシェアの把握により、市場内における自社の立ち位置を確認できます。競合他社との差を知れば、利益拡大のために何が必要なのか理解でき、課題の発見につながるでしょう。マーケットシェアを知ったうえで、現在の自社がもっている影響力を認識できれば、的確な目標設定や効果的な事業戦略の策定にも役立ちます。
新事業の検討に役立つ
マーケットシェアの把握は、新事業を展開する場合にも欠かせません。対象となる市場のシェア率や競合他社数など、市場の現状把握ができるため慎重に参入計画を検討できます。また、マーケットシェアの把握によって自社の優位性がわかるため、市場への参入判断もしやすいでしょう。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちら高いマーケットシェアのメリット
マーケットシェアが高くなると、自社が市場に与える影響も大きくなり、ブランド力の強化につながります。社会的な信頼を得られるだけでなく、ビジネスシーンにおける取引では有利な条件で進めやすくなるでしょう。
ブランドの信頼性が高くなれば、新しい事業を展開した場合でも高い集客効果を期待できます。また、規模が大きい市場の場合は、生産量の増加によりコスト軽減などの効果を得られる点もメリットです。マーケットシェアが高くなれば自社を知ってもらう機会が増えるため、人材採用も進めやすくなります。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらマーケットシェアの求め方
市場における優位性を確保するためには、マーケットシェアの計算方法を知っておくことが大切です。ここでは、2種類のシェア率について計算方法を解説します。
絶対的市場シェア率の計算方法
絶対的市場シェア率は下記の計算式で求められます。
- 絶対的市場シェア率 = 対象となる製品の売上 ÷ 所属する市場の売上
例えば、対象となる製品の売上が300万円、所属する市場の売上が2,000万円とすると、下記のようにシェア率が求められます。
- 300万円 ÷ 2,000万円 = 15%
相対的市場シェア率の計算方法
相対的市場シェア率は下記の計算式で求められます。なお、相対的市場シェア率を求める際には、先に絶対的市場シェア率を求めます。
- 相対的市場シェア率 = 自社の絶対的市場シェア率 ÷ 自社製品と同じ市場の競合が持つ絶対的市場シェア率
たとえば、自社製品の売上が300万円、競合製品の売上が500万円で、市場の売上が2,000万円の場合は下記のように求められます。
- 15% ÷ 25% = 60%
マーケットシェアにおける目標値
マーケットシェアを活用した経営において、目標設定の参考になるのが「クープマン目標値」です。市場内における自社製品の立ち位置を判断するための目安となります。
クープマン目標値は6つの段階に分けて算出されており、より上位の目標値をクリアすれば、より影響力の高い状態であると判断できます。ここからは、6つの段階に分けられたクープマン目標値について解説します。
1.独占的市場シェア
独占的市場シェアは、上位企業が市場を独占している状態を指します。上位2社または3社の合計で73.9%以上のシェアを占めており、短い期間で上位と入れ替わるのが難しい市場です。
独占的市場シェアを達成できれば、企業への信頼度や市場への影響力が大きくなり、業界を牽引していく企業として周りに認知されます。最終的に目指したい段階ではあるものの、十分な資金力や開発スキルが必要です。
2.相対的安定市場シェア
相対的安定市場シェアは、一般的に安定しているとされるシェア率の41.7%を超えている状態を示します。この数値は、安定目標値と呼ぶ場合もあり、企業が目指す基準として多く用いられています。相対的安定市場シェアをクリアできていれば、市場内での影響力が大きくなっている可能性があります。
3.市場影響シェア
市場影響シェア(下限目標値)は、26.1%を超えるシェア率を有している状態を示します。市場における影響力の目安になる数値です。市場影響シェアに達しているのであれば、他社に与える影響が大きく、市場でもトップレベルのシェア率を有しているでしょう。ただし、他社から覆される恐れもあるため、シェア率の確保と向上も継続して目指す必要があります。
4.並列的競争シェア
並列的競争シェアは、市場での競争から抜け出すための基準となる目標値で、19.3%を超えるシェア率を表します。市場に並列的競争シェアをクリアした企業がいない場合、ほとんどの企業が横並びで競争しています。他社との差別化を図るためには、さらに上位の目標を目指す必要があります。
5.市場認知シェア
市場認知シェアは影響目標値とも呼ばれており、10.9%を超えたシェア率を持っている状態を指します。消費者や競合の企業から認知される目安となり、市場で影響を及ぼす企業になるための第一歩となるでしょう。市場認知シェアに満たない場合、社会に自社製品があまり認知されていない状態となるため、シェア拡大のための戦略を考えなければなりません。
6.市場存在シェア
市場存在シェアは6.8%をクリアして有している状態で、存在目標値と呼ばれるケースもあります。市場に存在しているだけの状態で、他社や消費者に影響を与えることはありません。市場に参入したばかりの企業が目標とする数値ではありますが、市場存在シェアをクリアできないならリスクを考え、撤退も視野に入れるべきです。
7.市場橋頭堡シェア
市場橋頭堡(きょうとうほ)シェアは、2.8%のシェア率を指す目標値です。市場参入した際の足がかりとして目標とすべき数値であり、生き残るためにはさらに上を目指す必要があります。圧倒的に影響力や認知度が低い状態でもシェア率を伸ばすためには、下位企業としてのマーケティング戦略を考える必要があります。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらマーケットシェアを考える際の注意点
マーケットシェアを意識してマーケティングする場合には、以下の3点に注意が必要です。
将来性の予測には適さない
マーケットシェアは、将来予測の参考には適していません。マーケットシェアでは、対象となる期間内において、自社の状況を確認するための数値であり、さまざまな要因から将来的に変動する可能性があります。現状を把握して課題を発見するための参考にはなりますが、将来性を予測する要素には向いていません。
トレンドの影響を受けやすい
マーケットシェアは、トレンドの影響を受けやすい点にも注意が必要です。また、一時的な流行や季節、天気などの外的要因も影響します。マーケットシェアの算出期間によっては、通常の参考にはならない数値が出てしまうケースもあるため、外的要因にも目を向けたうえで、分析・活用することが大切です。
競合のシェア率に左右される
マーケットシェアの数値は、競合のシェア率が変動した場合に影響を受ける点も理解しておきましょう。たとえば、競合が他の事業に着手した場合などにシェア率が低下すると、自社のシェア率は向上します。
しかし、自社の成果が出ているわけではありません。正確なマーケティングを実施していくためにも、シェア率の変動要因について、誤認しないように注意が必要です。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらまとめ
自社製品の売り上げ拡大を狙うためには、マーケットシェアの把握が欠かせません。マーケットシェアから自社の立ち位置を把握したうえで、今後の課題を発見すれば、効果的なマーケティング戦略の策定に役立つでしょう。
また、マーケティングによるシェア拡大のためには、マーケットシェアのほか、市場動向の把握も重要です。NIKKEI The KNOWLEDGEを活用すると、市場の最新情報やトレンドなどの情報がいち早く入手できます。有料媒体を含む400以上の情報ソースからAIが情報を選別・整理し、より専門性の高い情報を入手しやすくなります。
情報収集の効率性を高めて戦略的なマーケティングを行うためにも、以下から無料トライアルをお試しください。
1カ月無料のトライアルができます
企業のナレッジマネジメントを支援する
日経ザ・ナレッジ
ビジネスコンテンツ
専門誌・ビジネス誌・Web情報
(400以上)
抽出されるバインダー
ワークスペース
日経ザ・ナレッジは、注目する業界や関連キーワードを最初に設定するだけで、AIが最適な情報を選定して毎日配信します。あとは送られてきた情報をパソコンやスマートフォンで確認するだけ。
日経新聞の関連媒体はもちろん、有料の収録媒体についても全文購読が可能です。
気になるニュースや情報があったら「ピン留め」してワークスペースに保存すれば、チーム内でシェアしたり、コメントをつけてディスカッションすることも可能です。ニュースを起点にしてディスカッションできるので、各人がニュースを読むだけの場合と比べて、メンバー全員の知識を深めることが期待できます。
通常では閲覧できない有料記事も、日経ザ・ナレッジ内では全文購読が可能です。
使えば使うほど、読めば読むほどAIが学習し、最適化された深いニュースを素早くキャッチできるようになります。
1カ月無料のトライアルができます