この記事では、ナレッジマネジメントやDXの基本的な考え方、ナレッジマネジメントがDXに必要な理由を解説します。DX推進に役立つナレッジマネジメントツールもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントは、1990年代初頭に日本の経営学者・野中郁次郎氏によって提唱された考え方です。まずは、ナレッジマネジメントの意味と種類を見ていきましょう。

ナレッジマネジメントの意味

ナレッジマネジメント（Knowledge Management）は、直訳すると「知識管理」となります。企業におけるナレッジとは、従業員の経験やスキル、ノウハウのことです。ナレッジマネジメントは、単なる企業の知識管理にとどまらず、知識を活用した経営という意味合いもあります。

知識の暗黙知と形式知

ナレッジには「暗黙知」と「形式知」の2種類があります。暗黙知は経験を通じて獲得する知識で、言語化が難しいケースも少なくありません。形式知は客観的な知識で、言葉や図で表現しやすい情報が中心です。ナレッジマネジメントを活用し、暗黙知を形式知に変換することで、組織内での情報共有がスムーズに行いやすくなります。

ナレッジマネジメントのタイプ

ナレッジマネジメントには下記の4つのタイプがあります。

• ベストプラクティス共有型
• 専門知ネット型
• 知的資本型
• 顧客知共有型

ベストプラクティス共有型では、成功事例や優秀な従業員のノウハウを共有することで、組織全体のスキルアップを目指します。専門知ネット型は、専門知識を有する人材の力を借りて問題にアプローチする方法です。専門家の知識をデータベースで検索できるようにしたり、質問や相談ができるコミュニティを構築したりすることで、よりよい解決策が見つかりやすくなります。

知的資本型とは、企業がもつ膨大な情報を分析し、経営に役立てる方法です。顧客知共有型では、顧客から得られる情報をもとに、商品やサービスの改善を行います。「商品の耐久性を上げてほしい」「サービス内容を細かく選択できるようにしてほしい」など、実際の声を反映させることで、顧客満足度の向上が期待できる方法です。

ナレッジマネジメントが必要な理由

ナレッジマネジメントは企業・従業員の双方にとって重要です。ここでは、ナレッジマネジメントが必要とされる3つの理由を解説します。

企業の知識継承のため

働き方が多様化し、終身雇用制度の見直しが進むなかで、業務を通じての知識継承が難しくなっています。労働市場が流動化したことで、従業員が1つの企業にとどまらないケースが増えたのも大きな要因です。ベテランから若手への自然な知識継承が困難な状況下で、企業の資産である知識やノウハウを適切に受け継いでいく手段として、ナレッジマネジメントが注目されています。

業務の属人化を防ぐ

ナレッジマネジメントに取り組んでいない企業では、従業員の業務量に偏りが発生しやすくなります。特定の従業員だけ負担が増えると、不公平感が生じるだけでなく、組織としての生産性も上がりません。ナレッジマネジメントによって知識を集約させることで、誰でも簡単に情報を取り出せるようになります。負担を分散し、業務の属人化を防ぐ意味でも、ナレッジマネジメントは有効です。

DXを進めるため

ナレッジマネジメントは、DX推進の観点からも重要な役割を果たします。DX実現に向けたシステムを構築するには、現場の状況を把握し、関係者間で共有しなくてはなりません。ナレッジマネジメントが不十分だと、DXも効果を上げにくいため、土台を整えておく必要があります。

DXとは

DXは、デジタル社会において企業が競争力を高めていくのに欠かせない取り組みです。ここからは、DXの意味とIT化との違いを見ていきましょう。

DXの意味

DX（Digital Transformation：デジタル改革）は、デジタル技術を活用し、ビジネスを変革することで、業務効率の改善や生産性の向上を目指すことです。すでに多くの企業がDX推進に取り組んでおり、既存サービスの高付加価値化や、リスクマネジメントの強化などの成果を上げています。

DXとIT化との違い

IT化とは、既存の業務プロセスにデジタル技術を導入することで、負担の軽減や最適化をはかることを指します。一方、DXはデジタル技術によって製品・サービスの変革を起こすことが目的です。「デジタル技術」を活用するところも同じですが、IT化はDXを果たすための手段といえます。

DXにおけるナレッジマネジメントの必要性

企業がDXを進めるためには、ナレッジマネジメントを活用した社内での情報共有が不可欠です。DXに取り組む際は、まず「どのようなシステムが自社に合うのか」を見極める必要があります。現場の状況や課題といった情報が共有されていないと、企業にマッチするシステムが分からず、期待したような効果が発揮できません。

ナレッジマネジメントの実践方法

運用ルールを定めたり、ツールを導入したりすることで、ナレッジマネジメントの効果は高まります。ここでは、ナレッジマネジメントの実践方法を2つ解説します。

文書管理のデジタル化

まずは、ナレッジの元となる文書管理をデジタル化するところから始めましょう。デジタル化すべき文書には、「製品カタログ」「取扱説明書」「技術仕様書」などの一般的な資料だけでなく、「ミーティング議事録」「クレーム報告書」といった個別の記録も含まれます。文書の検索性を高め、ナレッジの活用を促進するためにも、適切な管理・運用を行うことが重要です。

ナレッジマネジメントツールの導入

文書管理の手間を減らし、検索性を向上させるためには、ナレッジマネジメントツールの導入も有効です。ナレッジマネジメントの必要性の高まりとともに、さまざまなツールが登場しています。ナレッジマネジメントツールを導入する際は、自社の課題解決につながるものを選びましょう。

DXのためのナレッジマネジメントのポイント

日本では経済産業省が主体となり、DXに関する情報発信や支援施策を講じています。今回は2020年に発表された経済産業省の「DXレポート2 中間取りまとめ」を参考に、DXのためのナレッジマネジメントのポイントをまとめてみました。

職場環境のオンライン化

従来はオフィスに出社して業務を行うのが一般的でしたが、リモートワークの浸透により、オンラインでのやりとりは増加傾向にあります。リモートワークでもスムーズに情報にアクセスするためには、職場環境のオンライン化が欠かせません。セキュリティの問題など、オンライン化に対する支障があるなら、まずその課題を解決するところから始めましょう。

プロセスのデジタル化

業務プロセスのデジタル化も、ナレッジマネジメントに役立ちます。書類の電子化や、Web会議システムを利用した営業活動は、時間やコストの削減にも効果的です。定型業務を自動化できるRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）も、ナレッジの蓄積や共有に向いています。

DX推進に役立つナレッジマネジメントツール

DX推進に役立つナレッジマネジメントツールを5つ紹介します。それぞれのツールの特徴や利用シーンを比較しながら、自社に最適なツールを選びましょう。

社内wiki

社内wikiとは、従業員がそれぞれのナレッジを書き込み、お互いに閲覧できるツールです。「従業員がつくる自社の百科事典」のような存在で、知りたい情報を気軽に確認できます。社内wikiは、業務マニュアルの作成や月報などのテンプレート共有、社内規則の周知など、さまざまなシーンで役立ちます。

ビジネスチャット

ビジネスチャットとは、社内のコミュニケーションに利用できるツールです。メールや電話よりも手軽に利用でき、一度に複数人に対してメッセージを発信できるなど、使いやすさやスピードに強みがあります。

Web会議システム

Web会議システムとは、インターネットを通じて、遠隔地にいる人と映像や音声のやりとりができるツールです。Web会議システムを導入することで、リモートワーク時にも会議に参加でき、交通費や移動時間の節約につながります。録画や議事録を作成する機能がついたサービスなら、ナレッジの効率的な蓄積が可能です。

社内SNS

社内SNSとは、企業向けにカスタマイズされたソーシャルネットワーキングサービスです。気軽に情報を発信したりアクションを示したりできるので、コミュニケーションが活性化され、ナレッジの共有や一体感の醸成に役立ちます。

オンラインストレージ

オンラインストレージとは、インターネット上でデータ保管・共有ができるシステムです。近年では、場所や時間を問わずアクセスできるツールを活用する企業が増えています。外部のオンラインストレージサービスを利用することは、トラブルや災害発生時のリスク分散にもなります。

まとめ

ナレッジマネジメントを取り入れることで、組織内の情報共有が円滑にでき、企業の競争力が高まります。DXを推進し、新しい価値の提供を目指す企業にとっても、ナレッジマネジメントは欠かせません。

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