インサイトとは
顧客インサイト、消費者インサイトとも呼ばれるインサイトは、「洞察」や「物事を見抜く力」と訳されます。マーケティングにおけるインサイトとは、消費者自身も気づいていない無意識の心理のことです。当たり前として見過ごしている課題や、製品・サービスを利用して初めて知る感情などを分析すると、インサイトを得られます。
インサイトとニーズの違い
消費者の製品・サービスに対する欲求は、3つの階層に分けられます。ニーズとインサイトの違いは、海に浮かぶ氷山をイメージするとよく分かります。海上に露出している部分を「顕在ニーズ」として、海の中に「潜在ニーズ」「インサイト」が潜んでいる様子をイメージしましょう。
顕在ニーズ
顕在ニーズは、氷山のうち海上に露出している部分に該当します。顕在ニーズは消費者自身が分かっているニーズや要望です。しかも、消費者自身で言語化できているため、企業は消費者の顕在ニーズを明確に把握できます。
「製品のカラーバリエーションを増やしてほしい」「カスタマーサポートを手厚くしてほしい」など、インタビューやアンケートなどの結果を見れば、顕在ニーズを収集できます。
潜在ニーズ
潜在ニーズは、氷山のうち、水面下で見えないものの手を伸ばせば届く部分に該当します。消費者自身も自覚していない潜在ニーズは漠然としていますが、企業からの質問やインタビューを通じて言語化可能です。コミュニケーション能力に長けた人なら、消費者の潜在ニーズを上手く引き出せます。
インサイト
インサイトは、潜在ニーズよりもさらに深い場所にあります。インサイトは潜在ニーズと混同されがちですが、意味合いは異なります。たとえば、消費者が「痩せたい」と思っている(顕在ニーズ)としましょう。痩せたい理由を掘り下げると、健康や外見に対する理由(潜在ニーズ)が見えてきます。
一方で、インサイトはまだ欲求さえ生じていない状態です。インタビューしているときの消費者の声色や表情の変化、データ分析で見つかるわずかな傾向などに注目しないと、インサイトは得られません。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらインサイトが注目される理由
インサイトが注目される背景には、近年のモノの売れにくさがあります。モノを売るには、インサイトにもとづくアプローチが必要です。
現代はモノが売れにくい
インサイトが注目される理由は、他と差別化できないモノが売れにくくなっているためです。近年は高品質で手頃な製品・サービスが多く、選択肢が豊富になりました。しかし、消費者が何を基準にモノを選んでいるか、はっきりしないケースも少なくありません。
製品・サービスの機能や品質が均質化されている近年の状況では、消費者は価値や体験を重視します。モノを売るためには、インサイトを得て他にはない価値や体験を提供する必要があります。
ニーズを捉えるだけでは不十分
かつてのような顕在・潜在ニーズにもとづく製品開発では、明確な差別化ができません。多くの消費者は、既存の製品やサービスに満足している状況です。需要にもとづくモノづくりを続けても、ありきたりなモノに留まるおそれがあります。
売れるモノをつくるには、消費者自身も意識していなかった需要をつくり出す必要があります。顕在・潜在ニーズよりも踏み込んだインサイトに注目して、新しい視点から消費者にアプローチしましょう。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらインサイトを得る手段
インサイトは容易には得られません。インサイトの手がかりとなるデータを得る手段について、調査・分析のコツも交えて解説します。
行動観察調査
ターゲットの行動を観察して分析する行動観察調査は、インサイトを探るために手軽ながら効果的なリサーチ方法です。調査では、日常生活や店頭で買い物するときの行動を観察したり、UI・UXテストを実施したりして、ターゲットの行動や思考に関するデータを取得します。
行動や思考の理由を想像しながら観察・分析すると、消費者本人が意識していないインサイトにたどり着きます。
SNS分析
SNS分析とは、SNSの投稿から、消費者の属性や購入動機、利用状況などを分析することです。匿名で発信できるSNSには消費者が本音を書き込む可能性が高く、内容を分析すればインサイトに気がつける可能性があります。
分析する際は、調査対象の製品をキーワードにして検索することがコツです。抽出された投稿を読み、共通点や注目すべきポイントなどを見つけ出して、インサイトを探りましょう。
インタビュー調査
インサイトの調査以外でも活用されるインタビュー調査は、消費者自身の価値観や日常生活、製品・サービスへの評価などを聞き取る手法です。インタビュー調査には複数のやり方があるので、ポイントを押さえておきましょう。
たとえば、グループインタビューでは、参加者同士の会話からユニークな意見が引き出される場合があります。1対1で行われるデプスインタビューは、家計や病気の話など、プライベートな内容を取り扱うときにおすすめです。
MROC
MROC(エムロック)は、Marketing Research Online Communityの略語で、近年注目されるデータ収集方法です。MROCではターゲットの専用コミュニティをオンライン上につくり、交流の様子を観察して情報収集します。ターゲットの交流を観察すると、想定外の気づきを得られる場合があります。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらインサイトを得る手順
インサイトを得る手順について解説します。データを分析してインサイトを得たら、マーケティングに反映させましょう。
データの収集
まずは前述の方法でデータを収集しましょう。インサイトを得るには、定量的・定性的なデータが必要です。定量的なデータとは数値として表せるもののことで、全体の傾向を把握するために役立ちます。
定性的なデータとは、感情や心情など数値で表しにくいもののことです。状況を把握するためには複数の定性的なデータを集める必要がありますが、調査結果が偏らないように消費者の属性を考慮しましょう。
収集したデータの分析
収集したデータを整理、統合して分析します。データ量が膨大な場合は、Googleアナリティクスのようなアクセス解析ツールや、CDPやプライベートDMPが活用されます。CDPもプライベートDMPも、顧客データを一元管理するデータ基盤です。
フレームワークの活用
インサイトを可視化するために、ペルソナ設定・共感マップ作成に着手しましょう。ペルソナとは、実在の人物のように、プロフィールが詳細に設定されたターゲットを指します。共感マップとは、ターゲットの状況や価値観を図として整理したもののことです。既存のフレームワークの項目を埋めていくと、ペルソナの設定・共感マップ作成を効率よく進められます。
新しい視点からアプローチする
データ収集・分析、フレームワークの活用を通して得られたインサイトから、新しいアプローチを考えましょう。消費者のインサイトに近い製品・サービスを開発できるほど、ヒットの可能性が高まります。固定観念を捨てて、消費者のインサイトの発見・実体化に取り組みましょう。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらまとめ
顕在・潜在ニーズは比較的容易に得られるとはいえ、消費者自身が欲求に気づいていないインサイトは容易に得られません。定量・定性両方のデータを取得して分析すると、インサイトを得られます。消費者のインサイトを得て製品やサービスの開発に取り組み、売れるモノをつくりましょう。
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