「生産性向上」の定義
生産性向上の理解を深めるために、まずは定義を確認しておきましょう。
生産性向上とは?
生産性向上とは、企業が効率的に利益を上げるための取り組みです。生産性とはコストに対する成果量の比率のことです。コストには労働力や資本などが含まれており、成果量とは利益や商品・サービスを生産できた量を指します。生産性向上により、少ないコストでより多くの利益や商品、サービスなどを生み出すことが可能です。
「業務効率化」との違い
業務効率化とは、その名のとおり業務を効率的に行うための取り組みです。無駄な業務を削減して業務プロセスを改善し、成果の最大化を目指します。生産性向上とは、より少ないコストで商品やサービスを生み出し、利益を上げることが目的です。業務効率化によりコスト削減が図れるため、業務効率化は生産性向上のための施策の1つといえるでしょう。
生産性の2つの種類
生産性には、大きく分けて以下の2つの種類があります。
- 物的労働生産性
- 付加価値労働生産性
物的労働生産性とは、労働者1人あたりの生産量を表すものです。物的労働生産性は「生産量(販売金額)÷労働量」で求められます。付加価値労働生産性とは、労働者1人あたりが粗利をどの程度生み出したかを表すもので、「付加価値額÷労働量」で算出できます。
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生産性向上が求められる背景
企業では生産性向上が求められています。ここでは、生産性向上が求められる理由について詳しく解説します。
国内の労働力人口の減少
生産性向上が求められる大きな理由の1つに、国内の労働力人口の減少があげられます。日本では少子高齢化が加速化しており、人口の減少傾向に伴い労働力も減少している現状があります。少ない労働力で成果を上げるためには、より少ないコストで利益を上げることが必要となるため、生産性向上が急務です。
日本の国際競争力の低下
日本の国際競争力が低下していることも、生産性向上が重視されるようになった理由の1つです。日本は、ビジネスに関する生産性が国際的に見ても低下傾向にあります。今後、人口減少によって需要が減り、国内市場が縮小していくなかで、国際競争力の強化は急務です。そのため、国をあげて生産性向上に取り組むべきだと考えられています。
労働者の意識変化
労働者の意識が変化していることも、生産性向上が求められる要因です。近年では、働きやすい労働環境が求められる傾向が高まっています。生産性向上が進んでいない企業は、従業員の労働時間が長くなる傾向にあるため、優秀な人材の確保が難しくなるでしょう。人材確保の観点からも、生産性向上を目指す必要があります。
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生産性向上によるメリット
生産性向上を実現できると、コスト削減だけでなく、従業員や顧客の満足度向上につながります。以下で具体的に解説します。
コストを削減できる
生産性向上の実現は、コスト削減につながります。たとえば、原材料の仕入先を見直す、投入する資源の量や質を見直す、無駄な作業を削減するなどの施策を検討して、生産性向上を図ります。これにより、少ない人数や労働時間、原材料で今までと同様の成果物を生み出すことが可能です。
従業員満足度が向上する
生産性向上に向けた取り組みでは、従業員の負担を軽減するために、業務効率化や労働時間の短縮、単純作業の自動化などの施策を行うケースが一般的です。働きやすい職場環境の構築はワークライフバランスが整いやすく、従業員のモチベーション向上とともに、企業に対する満足度が向上する可能性が高くなります。
顧客満足度が高まる
顧客満足度の向上も、生産性向上の実現で得られるメリットの1つです。前述したように、さまざまな無駄を省きコストを削減することで、商品のコストパフォーマンスが高まります。また、従業員のモチベーション向上によって、さらに質の高いサービスの提供が可能になるため、結果として顧客満足度の高まりが期待できます。
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生産性向上のデメリット
生産性向上そのものにデメリットはありません。ただし、誤った施策で生産性向上の取り組みを進めてしまうと、生産性の低下につながる可能性もあるため注意しましょう。
たとえば、一部の業務のみ特化して生産性向上に取り組むと、従業員間の業務量が偏り不満の声があがるかもしれません。また、無理にコストカットをすると従業員のモチベーションが下がりやすく、望む結果を得られないおそれがあります。
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生産性向上を実現する方法
生産性向上は、以下で解説する3つの方法に集中して取り組むことで実現しやすくなります。
業務の見直しとデジタル化
まずは業務の見直しを行いましょう。業務内容を棚卸して、必要性の低い無駄な業務を洗い出します。そのうえで、業務の簡略化や削減、必要のない業務の削除などを行いましょう。デジタル化できる業務があれば、デジタル化を進めていきます。たとえば、ビジネスツールの導入や事務作業の自動化は、生産性向上につながる有効な施策です。
従業員のスキルアップ支援
従業員のスキルアップによって生産性向上につながるため、支援制度を設けるのも有効な方法です。たとえば、社内で研修やセミナーを実施する、もしくは外部に依頼するなどして、資格取得に向けたサポート制度を用意しましょう。資格取得に対する手当を支給する仕組みがあれば、従業員のモチベーション向上も期待できます。
組織のエンゲージメント向上
組織のエンゲージメント向上は、モチベーション向上に直結する要素となるため、生産性向上に欠かせません。エンゲージメントとは、企業に対する愛着や共感のことです。たとえば、人事評価制度の見直しや社内コミュニケーションの促進、労働環境の整備などを行うとよいでしょう。
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生産性向上に取り組む手順
生産性向上に取り組むためには、手順をしっかり把握しておく必要があります。
現状を可視化する
現状の可視化は、問題点や改善点を明確にするために欠かせない作業です。たとえば、業務の指揮命令系統や進め方、各業務に費やしている時間や人的リソース、費用などを点検して現状の問題点を明らかにします。また、業務のフローチャートを作成すると全体像が可視化されるので、問題点の把握に効果的です。
業務を取捨選択する
業務を可視化できたら、業務を見直して取捨選択します。無駄な業務や非効率な業務の存在がないか、1つずつ確認していきましょう。この際、業務における課題や改善すべき点をリストアップすることが大切です。課題や改善点をもとにした業務のチェックにより、削減できる業務を発見しやすくなります。
アウトソーシングを検討する
アウトソーシングとは、業務の一部または全部を外部に委託することです。たとえば、効率が悪くても削減が難しい業務を専門の外部機関に委託できれば、自社の従業員を重要な業務に振り分けられます。アウトソーシングの可否は、費用対効果が高いこと、業務の質や量が向上することなどを判断基準にするとよいでしょう。
従業員の再配置
必要に応じて従業員の再配置を検討しましょう。従業員ごとのスキルや特性、経歴などを考慮しながら適材適所の再配置ができれば、生産性が高まります。再配置を行う際は、モチベーションの低下を防ぐために本人と面談を行い、希望や今後のキャリアプランなどを聞き取りながら進めましょう。
スキルアップ支援の実施
社内で不足しているスキルが見つかった場合は、従業員へのスキルアップ支援が必要です。従業員が資格取得やスキルアップをすることで、コストを抑えながら生産性向上を目指せます。自社に必要なスキルを把握するためには、現場へのヒアリングをするのもよい方法です。
デジタルツールの活用
自社で行うには効率が悪いものの、アウトソーシングできない業務は、デジタルツールの導入によって解決できる可能性があります。たとえば、ペーパーレス化や業務の自動化、マニュアル作成ツールを活用した業務の標準化、チャットツールなど、さまざまなデジタルツールがあります。
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生産性向上の施策の注意点
生産性向上の施策に取り組む際には、以下で解説する3つのポイントに注意しましょう。
業務効率化だけに注目しない
生産性向上の取り組む際は、業務効率化だけを重視しがちです。しかし、業務効率化だけを考えて施策を検討すると、視野が狭まるため注意しましょう。業務効率化を考えすぎるあまり業務プロセスを無理に減らしてしまい、商品・サービスの質が低下して売上が減少するリスクがあります。
長時間労働を防止する
生産性向上のためとはいえ、長時間労働は避けましょう。従業員1人あたりの労働時間を増やせば、少人数で生産性を向上できると思いがちです。しかし、一時的には生産性がアップしたとしても、従業員に疲労が溜まったりモチベーションが低下したりして、離職により人員不足に陥る可能性もあります。結果として生産性が低下するため注意が必要です。
長期的に取り組む
生産性向上は、短期ではなく長期的に取り組むことが重要です。生産性向上の施策を実行しても、短期間で効果を得るのは簡単ではありません。生産性向上は、長期的に見てコツコツ取り組むことで安定した結果を得られます。短期的な結果だけでは参考にならないので、長期的な視点で施策を考えて実行しましょう。
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まとめ
生産性向上とは、さまざまな施策を通して効率的に利益を上げる取り組みです。生産性向上を実現するには、業務の見直しや従業員のスキルアップサポートを行う方法があります。さらに、デジタルツールの導入も有効ですから、自社の課題を解決するツールを選定して導入しましょう。
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