GX(グリーントランスフォーメーション)の基本情報
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、どのようなものでしょうか。関連性のある言葉を含めて解説します。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GXは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称です。温室効果ガスの排出量削減を目的に、温室効果ガスを生み出す化石燃料から、クリーンな太陽光発電や風力発電などが中心の、産業構造へ転換する取り組みです。近年は世界中で地球温暖化が進み、温室効果ガスの排出量削減が喫緊の課題として、各国で対策が進められています。
日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」や、脱炭素社会の実現を目標としています。GXでは、カーボンニュートラルの実現と、経済成長の両立を目指しています。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた際にゼロとなる状態です。温室効果ガスの排出量削減を目指すものの、分野によっては排出量をゼロにするのは難しいため、森林の吸収や技術による除去を差し引き、実質的にゼロにする計画です。
2021年11月時点で、世界154か国・1地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。日本は2020年10月に、菅義偉内閣総理大臣(当時)が、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
脱炭素とは?
脱炭素とは、温室効果ガスにおいて大きな割合を占める、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることです。二酸化炭素の排出量が実質的にゼロとなる社会が「脱炭素社会」です。カーボンニュートラルは二酸化炭素を含めた、温室効果ガス全体の排出量がゼロである状態を示し、脱炭素は二酸化炭素の排出量をゼロにする行動を示します。
GX(グリーントランスフォーメーション)で日本政府が目指すものとは
GXを通じて、日本政府は以下の3つの実現を目指しています。
- 温室効果ガスの排出量は、第一段階として2030年までの間に2013年時点での数字と比較して46%削減し、2050年までにカーボンニュートラルの国際公約達成
- 安定的で安価なエネルギー供給につながる、エネルギー需給構造の転換
- 新たな市場- 需要を創出し、日本の産業競争力を強化することを通じて、経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用- 所得の拡大につなげる
GX(グリーントランスフォーメーション)が求められる背景
なぜGX(グリーントランスフォーメーション)が必要とされるのか、4つの背景を解説します。
地球温暖化が進行している
GXが求められる最大の背景には、地球温暖化の進行が挙げられます。2023年7月には、世界の平均気温が観測史上最高の17℃を記録しました。また、世界的に異常気象が頻繁に発生しており、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を削減しなければ、海面上昇や洪水、水不足などのリスクがさらに増すとされます。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、温室効果ガスの排出量削減を強化しなければ、2100年までに2.2~3.5℃もの気温上昇が進むという予想です。気候変動問題の国際的な枠組みの「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、かつ1.5℃に抑える努力をする」という世界共通の目標が掲げられています。
世界的でカーボンニュートラル宣言がなされている
世界中の多くの国が、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しており、世界的に脱炭素化への積極的な姿勢があります。
たとえば、イギリスでは一定規模以上の1,300社を超える企業に、2022年4月から気候関連の非財務情報開示が義務付けられました。ドイツでは2030年までに、総電力消費のうち65%を自然エネルギー発電で賄うと法制化されています。以前は非協力的だった温室効果ガス排出量1位の中国と2位のアメリカも、削減に向けた協議を継続的に進めています。
世界的にESG投資が拡大している
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの頭文字をとった略語です。3つの要素は企業の持続可能な成長に必要な要素とされ、企業に対する投資の判断基準の1つです。
ESG投資市場は急拡大しており、2015年の世界全体で662億ドルから、2021年末には9,281億ドルとなっています。GXへの取り組みはESG投資の判断材料となるため、GXが注目されています。
日本の重点投資分野の1つである
岸田文雄内閣が2022年6月、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定しました。このなかでは5つの「新しい資本主義に向けた計画的な重点投資」のうちの1つとして、GXへの投資が掲げられました。経済社会全体の大変革に向けて、今後10年間で150兆円を超える投資を実施するとしています。
また、「GX実行会議」を2022年7月から開催するとともに、新たな制度とGX経済移行債(仮称)」で長期的に投資を支援する予定です。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた日本政府の取り組み
日本政府ではGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向け、複数の取り組みを実施しています。
GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の開催
GX実行会議とは、GXの実行に必要な施策を検討するために設置されたものです。岸田文雄内閣総理大臣が議長、その他には内閣官房長官やGX実行推進大臣、有識者などによって構成されています。2022年7月に第1回GX実行会議が実施され、2023年2月には「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。
基本方針のなかでは「エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み」「成長志向型カーボンプライシング構想等の実現・実行」「今後10年を見据えたロードマップの全体像」などが表明されています。
GX(グリーントランスフォーメーション)リーグの枠組み
GX(グリーントランスフォーメーション)リーグとは、カーボンニュートラルの実現や社会の大幅な変革に備え、企業が連携して官・学とともに協働する場です。2023年1月末時点で679社もの企業が参画しており、参画企業の排出する二酸化炭素量は日本全体の4割以上にのぼります。
GXリーグでは「リーダーシップ」をコンセプトとして、GXに挑戦する企業が正しく評価され成長できる社会を目指しています。GXリーグへの参画には、「自らの排出削減の取り組み」「サプライチェーンでのカーボンニュートラルに向けた取り組み」「製品・サービスを通じた市場での取り組み」の3つが要件として必要です。
GXリーグでは、以下の3つの場を提供しています。
- 未来社会像 対話の場
- 市場ルール形成の場
- 自主的な排出量取引の場
GX(グリーントランスフォーメーション)を地域で支え、生活の脱炭素化を進める
環境省はカーボンニュートラル実現に向けて、2025年度までに「少なくとも100箇所の脱炭素先行地域を設定」「全国各地にて重点的な対策を実施」するとしています。また、住宅の脱炭素化として高性能な断熱窓への改修推進、建材一体型太陽光発電システムの開発による、建造物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めています。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちら企業がGX(グリーントランスフォーメーション)に取り組むメリット
企業がGX(グリーントランスフォーメーション)に注力することの、おもな3つのメリットを解説します。
公的予算の増加が期待できる
政府がGXを重点投資分野の1つと位置付けており、10年間で150兆円を超える投資を実現するとしているため、補助金制度の拡充が期待できます。
具体的には、温室効果ガスの排出量削減に励む企業を支援する「ものづくり補助金(グリーン枠)」や「事業再構築補助金(グリーン成長枠)」の要件が一部緩和される予定です。今後も引き続き、補助金の増加や支援策の拡充が期待できるでしょう。
企業イメージが向上する
消費者や投資家の多くが脱炭素に関心を持っており、GXに取り組む企業はイメージの向上が期待できます。環境に配慮した製品・サービスを選択する消費者が増加しているために、企業としての姿勢が評価されやすいでしょう。
就活生や転職活動に励む人などからの印象もよくなり、人材の確保にも有利に働きます。GXと関連する、専門スキルを有する人材の確保にも繋がるでしょう。
コスト削減に繋がる
GXに取り組む際は、自社のエネルギー使用量削減が欠かせません。エネルギー使用量を削減できると、コストの削減に繋がります。加えて、GXに取り組むなかで太陽光発電システムを導入すると、自社で使用するエネルギーを太陽光発電で賄うことも可能になるでしょう。
近年ではエネルギー使用量が高騰しており、リスク対策にもなります。コスト削減によって生まれた余剰予算を活用し、自社の課題解決や商品・サービスの内容拡充などが可能になるでしょう。
「日経ザ・ナレッジ」無料トライアルはこちらまとめ
GXとは、クリーンな発電方法を中心とする産業構造へ転換する取り組みです。地球温暖化の進行やESG投資の拡大、各国のカーボンニュートラル宣言によって、注目度が増しています。企業にとっても、公的予算増加やイメージ向上などのメリットが考えられるでしょう。
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