SX（サステナビリティ・トランスフォーメーション）とはなにか

SX（サステナビリティ・トランスフォーメーション）は、「Sustainability Transformation」の略語です。「持続可能性を重視した経営への変換」という意味があり、経済産業省が提唱しました。「Transformation」が「X」で表されるのは、英語では「Trans」を「X」で表すことが多いためです。

企業が社会とともに持続し利益を得るための戦略

SXとは、社会の持続性を維持すると同時に、持続的に企業利益を獲得することを目指す経営戦略に、変革しようという概念です。企業が将来にわたって持続的に利益を得るためには、社会の存続が不可欠です。DX化により競合への有意性を勝ち取るだけではなく、社会と企業の長期的な持続を考えることが重要といえます。

サステナビリティとは

「持続可能性」と訳されるサステナビリティには、地球環境・社会・経済を将来にわたって、持続させていく可能性という意味があります。1987年に国連総会で提唱された「持続可能な開発（Sustainable development）」が言葉の起源となり、2015年のSDGsの採択へとつながります。

SDGsとの関連性

SDGsには、「持続可能な開発目標」という意味があります。国連サミットが採択した国際的な目標であり、2030年までに地球規模で環境問題や人権問題を解決するための目標です。SDGsとSXは目指すものが同じであるため、SDGsに取り組むことで、SXが実現できると考えられます。

DX（デジタル・トランスフォーメーション）との関連性

DX（デジタル・トランスフォーメーション）は、デジタル技術を取り入れることで、便利で効率的な社会を構築しようという概念です。短期的な成果を求めるDXは、長期的な成果を求めるSXとは異なる部分が多いですが、DXを推し進めることでSXのための取り組みを効率的に実行できるため、同時に実行することが重要です。

SXが注目される背景

なぜSXが注目されるようになったのか、その理由・背景について解説します。

世界情勢の変化と不確実性

SXが注目されるようになった背景には、世界情勢の予想できない変化と不確実性があります。具体的な例として、IT技術の急速な進化、気候変動、新型コロナ感染症流行、ロシアのウクライナ侵攻などがあげられます。これらの不確実で不安な要素による経済損失をなくすために、SXの取り組みが重要視されています。

サステナビリティ（持続可能性）への意識の高まり

SXが注目されるようになった背景として、社会全体のサステナビリティへの意識の高まりが考えられます。企業が長期的・持続的に利益を獲得するためには、社会の将来への持続が欠かせないという考え方です。DXによるデジタル化だけではなく、SXによる持続的な変革が企業に求められるようになりました。

企業の社会貢献度が評価の基準となった

社会のサステナビリティへの意識の高まりにより、企業の社会貢献度が評価の基準となりました。投資家や社会全般の人が、企業の利益だけではなく、よい製品・サービスを作り、いかに社会貢献しているかで、企業を評価するようになりました。

GXとはなにか

GX（グリーントランスフォーメーション）は、「Green Transformation」の略語です。「脱炭素社会達成のための取り組みによる経済・社会の変革」を意味し、経済産業省が提唱しました。

脱炭素社会による経済成長を促すための戦略

GXは、脱炭素社会を実現するための取り組みを通じて、経済成長を促す企業戦略を立て、経済・社会を変革しようという概念です。温室効果ガスの排出削減に取り組み、環境を保護することで、産業競争力の向上につなげ、経済成長の機会を獲得しようとするものです。

カーボンニュートラルとの関連性

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという、地球温暖化対策の1つです。GXの実施において、カーボンニュートラルを目指すことは、社会と経済の変革につながると考えらます。

DXとの関連性

GXは、DXとともに実行することで、効率的に成果を出せます。温室効果ガスの排出量の把握・削減のためには、DXが欠かせません。GXを効果的に実行するためには、データの収集・管理・分析などのデジタル技術が必要です。

SXとの関連性

GXとSXは、どちらも社会の持続性を目指すもので、GXの実践は、結果的にSXの達成につながります。SXでは、社会の持続性に関するさまざまな分野での取り組みを行い、GXでは、社会の持続性につながるエネルギー関連の取り組みを行います。

GXが注目される背景

なぜGXが注目されるようになったのか、その理由・背景について解説します。

異常気象と地球温暖化の脅威

GXが注目されるようになった背景としては、異常気象と地球温暖化などによる脅威があげられます。地球温暖化により引き起こされる、異常気象・気候変動・自然災害などによる、経済損失をなくすためにGX推進が求められています。京都議定書・パリ協定などにより、温室効果ガスの削減目標が策定されたことも、GX推進に大きく影響しています。

2050年カーボンニュートラル宣言の影響

2020年の菅首相による、「2050年カーボンニュートラル宣言」が大きく影響しています。この宣言は、パリ協定実現のために、2050年までにカーボンニュートラルを達成するというものです。2022年、岸田内閣により、GXが重要投資分野に指定され、企業や国家の成長と競争力にとって不可欠なものとなっています。

SX・GXに取り組むメリット

SX・GXの実施により、企業イメージの向上と信頼獲得につながるなど、メリットは多いと考えられます。ここでは、SX・GXに取り組むメリットについて解説します。

環境保護と社会の持続性への尽力

SX・GXの実施により、環境保護と社会の持続性への尽力ができます。SX・GXのための企業活動を行うことで、地球の環境保護などの社会的課題の解決に貢献できます。社会への尽力が社会に認知されることで、企業評価が向上します。

企業イメージの向上とブランド力の強化

SX・GXの実施により、社会貢献度の高さが社会に認識されることで、企業イメージの向上とブランド力の強化につながります。これにより、企業の売上向上、人材確保の促進、従業員のモチベーション維持などの効果が得られます。

投資家・消費者からの信頼獲得

SX・GXの実施により、企業イメージ・ブランド力が向上することで、投資家・消費者からの信頼が獲得できます。消費者は、社会への貢献度の高い企業の製品を買う傾向があります。投資家・金融機関は、社会への貢献度の高い企業に投資してくれる傾向が高いです。

SXに取り組む企業の事例3選

社会・地球の持続可能な発展に貢献する「自動車メーカー」

クリーンな製品提供により、社会・地球の持続可能な発展に貢献している、「自動車メーカー」の取り組みを紹介します。森や里山の保全、廃車をリサイクル、自動車生産時のCO₂削減などを実践しています。

衣料品のリサイクル・リユースに取り組む「衣料品製造小売業」

資源を有効に使い環境負荷を減らすために、衣料品のリサイクル・リユースに取り組む、「衣料品製造小売業」の取り組みを紹介します。衣料品リサイクルのほか、再生エネルギー利用・エネルギー使用の効率化などの実践で、温室効果ガス排出量削減に努めています。

サステナビリティ推進部を設置した「総合商社」

社会とともに持続的な成長を目指し、サステナビリティ推進部を設置した、「総合商社」の取り組みを紹介します。廃棄物の削減などの環境負荷低減、持続可能な原料調達、再生可能エネルギー供給、自然生態系に与える影響軽減などに取り組んでいます。

GXに取り組む企業の事例3選

エネルギー企業として先進的なGXに取り組む「石油精製販売事業」

カーボンニュートラルの実現を目指し、エネルギー企業として先進的なGXを推進する、「石油精製販売事業」の取り組みを紹介します。CO₂を排出しない水素ステーション事業、生可能エネルギー導入、CO₂回収事業を推し進めています。

カーボンニュートラルに積極的に取り組む「食品製造販売業」

CO₂排出量削減目標を設定し、カーボンニュートラルに積極的に推進させる、「食品製造販売業」の取り組みを紹介します。太陽光発電設備の設置、バイオマス資源の利用、省エネ機器の導入などにより、排出するCO₂の削減に努めています。

環境負荷ゼロと経済成長の同時実現を目指す「通信事業」

新たな環境エネルギービジョンを策定し、環境負荷ゼロと経済成長の同時実現を目指す、「通信事業」の取り組みを紹介します。再生可能エネルギーの利用拡大、電力消費の削減可能な通信技術の開発、カーボンプライシング制度の導入などを実施しています。

SX・GXに取り組むための重要なポイント

SX・GXへの取り組みにおいて、成果を上げるために行うべきポイントについて解説します。

現状を把握したうえで計画を立てる

SX・GXに取り組む際は、自社における課題などの現状を把握したうえで、SX・GXの推進のためにできることを考え、計画を立てることが大切です。自社で排出している温室効果ガスの削減から始めるなど、社会や環境への貢献度を踏まえて、実行すべき活動を選ぶことをおすすめします。

SX・GX・DXを統合させ推進する

SX・GXに取り組む際は、SX・GX・DXを統合させ推進することで、成果を出しやすくなります。GX・SXの両方を実践することで、環境保護と社会の持続性につながります。いずれもDXを同時に推進させ、デジタル技術を活用することで効率的に成果をあげられます。

まとめ

SX・GXは、持続可能な社会を実現するために企業の経営戦略を変換し、企業価値の向上を目指そうという考え方です。地球温暖化・気候変動などの脅威、世界情勢の変化などを原因とする経済損失をなくし、社会と企業の共存を目指すことが、世界レベルでの重要課題といえます。

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