全日本食品株式会社は、2021年8月現在、全国13エリアの協同組合と、1,600店舗の加盟店が対等かつ相互に協力し合う国内最大級のボランタリーチェーン「全日食チェーン」を運営。1962年、葛飾区堀切の一軒家で産声を上げた同社は、「衆知の結集で個を生かし、流通業界の荒波を乗り越える」という設立当初の志をそのままに、一店一店の価値ある店舗経営の創出に力を尽くしています。
今回は、2019年より経営企画室室長に就任し、DX推進プロジェクト責任者であり、日経ザ・ナレッジの導入を牽引した同社当時常務取締役・佐藤隆さんにお話を伺いました。
日経ザ・ナレッジ 導入の目的は?
・積極的な情報収集や情報の共有を習慣化してほしい
・世の中の動きや自社の立ち位置を知った上で、戦略的な行動を取ってほしい
その効果は?
・経験や勘に頼らず → 客観的で正しい情報をもとに行動する習慣がついてきた
小売業界のデジタルシフトに対応するためツールを導入
初めに、御社についてお聞かせください。
佐藤さん(以下、佐藤):大手スーパーの台頭で中小の小売店の危機感が高まっていた1962年、共同仕入れを目的として設立しました。
1968年に社名を現在の「全日本食品株式会社」に変更し、ボランタリーチェーン活動を開始。加盟店が参加する各エリアの協同組合が株主となって全日食チェーン本部に出資、本部が加盟店に対してさまざまなサポートを行い、三者対等な関係を築いてきました。
現在は、全国1,600店舗とネットワークを構築し、国内のチェーンストアでは最も広範囲に商品をお届けしています。
DX推進プロジェクトで、日経ザ・ナレッジを導入いただきました。プロジェクトの概要について教えてください。
佐藤:ネットスーパーの強化、店舗の無人化、物流の効率化など、小売業のデジタルシフトが進んでいます。新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う消費者意識や購買行動の変化を受けて、成長戦略の見直しを図る企業が増えたことによるものでしょう。
DX推進プロジェクトは、こうした世の中の動きに対応するため、社長の声掛けで発足しました。店頭では顧客へのサービス提供や店舗の生産性向上、本部では社員の生産性向上やビジネス・プロセス改革をゴールとしています。
プロジェクトメンバーのうち4人はシステム担当ですが、ほかは各関係部門で実務を担う運用者を配置し、システム担当者と運用者の相互理解にもとづく横断的な連携を目指しました。
社員に現状を理解してもらうために正しい情報が必要
DX推進プロジェクトにおいて、情報の必要性を感じた理由をお聞かせください。
佐藤:実は当社は、比較的早くにデジタル化に着手しました。POS(販売時点情報管理)レジも1984年には導入していたんですよ。2011年には、会員カードから購買履歴データを参照し、購入頻度の高い商品で構成した特売チラシを渡すシステム「ZFSP」で、日経コンピュータ主催の「IT Japan Award 2011」準グランプリを受賞しました。
しかし、その後は残念ながら停滞。社内には過去の成功の記憶だけが残り、多くの人が「自分たちは先進的な取り組みをしている」と勘違いしていたと思います。
DXへの取り組みに先立ち、まずは経営陣をはじめ、社員に世の中の動きを知ってもらわなければなりません。世の中にはさまざまなテクノロジーが登場していること、当社が大きく後れをとっていること、だからこそDXへの取り組みが必要であることに気づいてもらう必要があったのです。
客観的で正しい情報をもとに、有効な戦略を立ててから新しいことに取り組む習慣を身につけてほしいという期待もありました。
日経ザ・ナレッジ導入以前は、社内ではどのように情報を収集・共有していたのですか?
佐藤:社長は常々、「日経(新聞)を読むように」と言っていましたが、出社後は業務に忙殺されてしまう人がほとんどでした。部署に配られる新聞の部数にも偏りがあって、全員が情報を積極的に取りにいったり、共有したりする環境ではなかったですね。
情報収集の方法が属人化していて、一人ひとりの情報の質と量にムラがあったのですね。
佐藤:そうですね。得た情報を共有して業務に活かすという考え方も浸透していませんでした。創業以来、私たちは「以和為貴(和を以って尊しと為す)」の教えを胸に歩んできましたが、社内の情報共有においては徹底されていなかったと感じています。
経産省の「DXレポート」や他社事例の共有、講師を招いての研修会などを通じて意識の改革を図っていたとき、日経ザ・ナレッジを知る機会があり、社長主導で導入が決まりました。日経新聞だけでなくさまざまな情報が厳選された上で配信されること、情報を自分だけでなくみんなで共有できることがポイントでしたね。
情報を知識に。日経ザ・ナレッジを通して、成果を出せるコミュニティーづくりを
実際に導入してみて、いかがでしたか?
佐藤:日経ザ・ナレッジを導入したことで、勘に頼るのではなく、他社の事例や新しいテクノロジーの情報を確認してから、戦略的に行動する習慣が少しずつ浸透してきたと感じています。見たい情報、欲しい情報だけをピックアップできるので、新聞よりスピーディーに情報収集できるのもメリットですね。
費用の問題はありますが(笑)、活用範囲を広げ、日経ザ・ナレッジが社員のコミュニティーとして、活発な意見交換の場になるようにしていきたいです。
利用促進のために工夫されていることがあれば教えてください。
佐藤:活用メンバーは、幹部社員とDX推進プロジェクトメンバーですが、全体の過半数は利用頻度が高く、誰かが担当している仕事に関連する記事があったら共有するなど、うまく活用している印象です。知りたいテーマを設定しておくと、AIが関連した記事を厳選してくれるのも、効率よく情報収集するのに役立っていますね。
反面、見ない人は見ない。上司が利用を促しても良いのですが、命令されて見るのは本質的ではありません。利用頻度が低い人には無理強いせず、利用したい人にアカウントを回すようにしました。
日経ザ・ナレッジを通して、全員が自由に意見を言い合って物事を決めていく、「以和為貴」を体現するようなコミュニティーを作り、社内で広げていきたいですね。
今後は、どのような使い方を想定されていますか?
佐藤:特定の部署やプロジェクトに関連する情報を見つけたとき、関係者にさっと共有する習慣がもっと根づけばいいと思います。個人的に知識を蓄積するだけでなく、共有して組織の知恵にしていくイメージです。
また、共有された情報にもっと自由にコメントをつけ合うことで、属人的なノウハウや経験といった知的資産も、より有効に活用していけるのではないかと考えています。堅苦しい会議より、普段の会話の中で意図せずアイディアが生まれることがありますから、コメントからそういった効果が生まれればいいですね。
DX推進プロジェクトといっても、メンバーは情報システム担当だけでなく、まったくシステムと関係ない業務の担当者もいる。それぞれの立場から忌憚ない意見を出すことで新しいアイディアが生まれてほしい、それを次のアクションに生かしてほしいと思っています。
日経ザ・ナレッジの機能は継続的に強化・改善されていて、最近では表示される情報の機械学習による最適化も進みました。これからは、今以上に最短距離で「見たいもの」「欲しい情報」にアクセスできるようになるといいですね。期待しています。
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